Student English Newspaper

Euglena ~the diminutive giant to save our future~


地球の未来を救う!小さな巨人・ミドリムシ

 植物特有の細胞壁がなく、自ら動くことができるにも関わらず葉緑体を持つ不思議な単細胞の藻類。誰もが理科の教科書で目にしたことがあるであろう微細藻類ユーグレナ(和名ミドリムシ)のことである。実はこのユーグレナには、世界を変えられるといっても過言ではない、様々な能力が秘められている―

株式会社ユーグレナ

 株式会社ユーグレナは、微細藻類ユーグレナを活用した商品や事業の展開を行うバイオテクノロジーの企業である。代表的な事業は食品や化粧品等のヘルスケア商品の販売、バイオ燃料の研究開発などのエネルギー環境事業。さらには遺伝子検査やバングラデシュでの支援事業と多岐にわたる。

 ユーグレナ社の創業者で社長でもある出雲氏が学生時代にバングラデシュを訪れたことがきっかけとなり、「バングラデシュの栄養問題を解決したい」という思いから2005年に株式会社ユーグレナが設立された。共に成長する同志として、ユーグレナでは社員のことを「仲間」と呼んでいるとのこと。

 今回我々は、そんな仲間とともに世界を変えたいという期待を胸に、勤めていた銀行を辞め、ユーグレナ社に入社したという、そして現在経営戦略部及び経営企画課で役職に就かれている木村さんにお話を伺うことができた。

お話を伺ったユーグレナ社の木村氏

食品としてのユーグレナ

 微細藻類ユーグレナには非常に多くの機能がある。一番の機能は豊富な栄養素が含まれており、心身ともに健康を促進することだろう。その栄養の豊富さから巷ではスーパーフードとも称されるほどだ。ユーグレナ社では、飲料をはじめとする様々な食品や化粧品を展開しており、顧客は20万人に及ぶ。ユーグレナは沖縄県の石垣島で生産され、加工し製品となって流通する。現在は通信販売などの e – コマースがメインだ。

 かつて食品として一般的ではなかったが、現在では誰もが自然に食品として受け入れ普及している乳酸菌飲料のように、将来的にはユーグレナが当たり前のように人々の生活に根付いたものにする。木村さんは、それがユーグレナ社の、また彼自身の夢であり使命だと語った。世間にユーグレナの効果を簡明に伝えるため、先日にはCMの放送も開始されている。

 また、会社設立のきっかけとなったバングラデシュでは、売り上げをもとに栄養の豊富なユーグレナクッキーを1日当たり現地の子どもたち1万人に無料で配布している。食料問題が解決するまで、この取り組みを終わらせることはない。

バイオ燃料としてのユーグレナ

 さらに、ユーグレナには、バイオ燃料としての力も秘められている。木村さんは「世界では、飛行機がバイオ燃料で飛んでいる国がある。しかし日本ではまだ前例がない。日本はバイオ燃料に関しては後進国。バイオ燃料が当たり前になる世の中にしていきたい」と話す。

 他の企業と手を組み、ユーグレナを利用したバイオ燃料を日本に浸透させることが、これからより一層力を入れていく取り組みだ。日本の環境事業を変えていく大きな一歩である。

CFO~将来世代に恥ずかしくない会社へ~ 

 ユーグレナ社は、昨年、新たな試みとして18歳以下限定でCFO(Chief Future Officer:未来最高責任者)とサミットメンバーの募集を始めた。CFOはユーグレナ社の将来に関することの責任を担っている。私たちはこの斬新な取り組みに興味を持ち、導入の経緯やメンバーの役割、仲間が受けた刺激について伺った。

 先ほど述べたように、ユーグレナ社は環境問題に関する事業を積極的に展開している。大抵の大人たちは環境問題に対して、利益面を気にしたり、温暖化の深刻さを理解していなかったりと、消極的な反応を示していた。そんな中、小学5年生たちが、気候変動などの環境問題を自分事として考えていた。彼ら彼女らに、「なぜ大人は真剣に取り組まないのか」と問われたことを機に、環境問題のことを真剣に考えているのは若い世代であることに気づいたという。同時に、彼ら彼女らの考えを実現していかなければ、会社は続いていかないことも実感した。そして、18歳以下の若者の熱意を経営にとり入れることを決意し、CFO及びサミットメンバーの募集が開始されたのだ。

 TwitterなどのSNSで若者に宣伝すると同時に、新聞の全面広告に載せたことが子どもからその保護者まで幅広い反響を呼び、小学校低学年から18歳まで計500件を超える応募があった。海外からの応募もあったという。応募者のバックグラウンドも、もともとサイエンスに興味があり研究をしていた人から、社会貢献に興味を持つ人までと実に多様であった。メンバーを選定する際に重視した点は以下3つの観点だ。①現在のユーグレナにはないアイデアを持っていること(新規性)②ただの決意表明ではなく、ユーグレナで何を実現したいか明確化されていること(具体性)③ユーグレナと根本となる考えは共通していること(共感性)。

 そして書類選考と面接の結果、CFO1人とサミットメンバー8人が第1期メンバーとして選ばれた。

 彼らが正式にCFO及びサミットメンバーに就任した2019年10月から毎月、ユーグレナ社はフューチャーサミットを開催している。初めの頃は、ユーグレナ社の事業を理解してもらうことに重点を置いていたが、現在は、第1期のテーマである「環境問題」を題材にディスカッションをしている。例えば、ユーグレナ社の事業がどのような形で自然環境に負荷をかけているか、それをどのように軽減していくかについて話し合う。CFO及びサミットメンバーの任期は1年間と決められているため、第2期はテーマが変わる。木村さんは、人権や貧困といったSDGsの環境問題以外のゴールに関するテーマが浮上する可能性もあるが、それもまた面白いと考えている。

「自分たちから変わらなければいけない」という若者の声に、仲間たちの意識も少しずつ変わり始めている。木村さんは、ペットボトルを使うのをやめ、竹が原料のマイボトルを使うようになったという。木村さんの同僚の方は、生産に大量の飼料を使用する牛肉を食べるのをやめたとのこと。

 二人に共通しているのは、将来世代に恥ずかしいという意識だ。若い世代は環境問題を自分事として意識している。それに対し、大人は真剣に考えていない。CFO及びサミットメンバーとの交流を通して、「将来世代に恥ずかしくない会社になる」という意識が強まった。

Comments (2)
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