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The Downward Spiral of the Kimono

日本人のきもの離れ

日本に訪れた海外からの観光客が驚くことの一つに、日本では伝統衣装であるはずのきものを街中でほとんど目にしないことが挙げられる。そもそも日常の中で嗜まれていたきものの歴史、その起源はおよそ一千年前の平安時代に遡る。しかし、今ではきものをどうやって着るのかを学ぶための教室が必要であるほどだ。なぜこんなにも艶やかで洗練された衣装は着付け教室が一生懸命働きかけなくてはならないほどにまで私たちの生活から離れてしまったのだろうか。

「実際にきものを着てみれば、なぜ人々が長い間着てきたのかわかる。そしてきっと好きになるはず。」そう話すのは民族衣裳文化普及協会の運営する「きもの文化教室」で講師をしている鎌田さんである。彼女は普段着としてもきものを着用しており、それは最も心地がよく、自分を綺麗に見せられるものだからだそうだ。かつて茶道、華道とともに花嫁修行の一環として着付けを学んだという。また、以前経験した海外での生活を通して、客観的な視点から日本を見たときにきものへの愛情がより深まったそうだ。そして現在、着付け教室できものの素晴らしさを伝えている。「きものは日本の四季を表す。その美しさをイベントや教室で伝えられたら。」

この団体はより多くの人へのきものの再認知と普及を目的として活動しており、今では全国で 200 もの教室を展開している。41 年もの歴史があるこの団体ではきものに関するイベントや着付けを学ぶためのコースを開講している。受講者は主に 30 代から 60 代の女性で、特に OL や子育てが一段落した方々が多いという。若者にもきものに関心を持ってもらうために従来のきものだけでなく、モダンでもっと手軽なデザインのものも推進している。例えばデニム生地のきものにベレー帽とブーツを合わせたものだ。ただ昔からあるものを継承するだけではなく、その時代に合わせることも大切であると述べる。

現在日本では成人式や結婚式など、特別な日にきものを着るとなれば、ほとんどがレンタルである。浅草や鎌倉、京都といった日本らしい街並みが残る場所ではレンタルショップを目にすることが多くなってきている。だがそれは、きものを着るとしても購入ではないためきもの生産を助けているとは言えない。人々がきものを購入しないことによって日本のきもの産業は縮小を余儀なくされている。伝統的なきもの屋では後継者の問題で店をたためなければならず、現在、きものの多くは中国やベトナムで生産されている。かつて世界屈指の生糸の生産国であった日本であるが、今では約 98 パーセントはブラジルからの輸入に頼っている。そして、きものへの需要が減ることで価格も必然的に高騰してきているのである。それに伴い購入したとしても、その後のメンテナンスが難しく、費用も高騰している。

こうした悪循環から脱却するために、鎌田さんはきものが人々にとって日用品になってほしい、週末だけでも、たまにでも着てほしいと願っている。人々がもっときものを着るようになれば生産も増え、価格も下がる。そうすれば、さらに多くの人がきものを着るようになる。「きものを外で着ればそれを見た他の人もその良さを認識するだろう」と鎌田さんは考える。

今では国内だけでなく、海外の方に向けてのきものの普及にも力を入れている。昨年は日本語学校や秋葉原で行われた東京多文化フェスティバルなど全国で着付け体験を行なった。団体の目標の 1 つが海外にも日本の文化を伝えることであるが、海外の人が日本の文化を楽しむ一方で、私たち日本人にも自分たちの伝統文化について再認識し、誇りに思ってほしいと考えている。「日本の伝統文化の素晴らしさを、私たちは若い世代に伝え広めていかなければならない」。 東京オリンピックに向けてきものは国文化の象徴として安定したにぎわいを見せるだろうと予想している。しかし、その後のにぎわいは少しずつ低下するのではないかと懸念している。

 現状のままでもきものは高尚で格式高い伝統の一部として残るかもしれない、そして、突然に日本人が再びきものを買って着るということを想像するのは難しい。これからはただ1つの団体が活動するだけでは十分ではない。まずは日本人が自分たちの国の文化を改めて学びなおすことが大切である。そして私たちは私たちの伝統文化に誇りを持って海外の人々に伝えていかなければならない。今でも皇族が素敵なきものを着れば興奮気味にそれを話題に出す。つまりそれは、日本人はまだ、きものに対して特別な関係を持っている証拠なのではないか。

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