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How Did Mitsubishi Pencil’s Jetstream Write its Own Blueprint for Success? -Prospects for Global Challenges-

三菱鉛筆「ジェットストリーム」の海外展開:「全く新しい油性ボールペン」の挑戦

海外でヒットする日本のボールペンとして、三菱鉛筆販売の油性ボールペンの「ジェットストリーム」が挙げられる。

ボールペンの全世界的な市場流通量は油性ボールペンが最も多い。ボールペンの中では最も歴史が古いことから品種が多く、価格の幅が広いからだ。欧米では、BIC等の知名度の高い商品のほかにナショナルブランド・プライベートブランド品共に中国製等の低価格品も多い。このことから小売店等の販売サイドは「油性ボールペン=低価格品」の認識が強い。

しかし、油性ボールペンユーザーが多数を占めていて競合する製品が遍く存在する海外で、どのようにしてジェットストリームが人気を集めたのだろうか。その理由は大きく分けて二つある。一つはジェットストリームの滑らかな書き心地だろう。油性ながらに水性のような独特の滑らかな書き味が受け入れられ、主に日本とアジアでユーザーの支持を得ているのだ。一方でノック式のゲルインクボールペンが主流であるアメリカ市場において、三菱鉛筆の中でもゲルインクボールペンより販売数が少ないジェットストリームはユーザー評価が高いのが特徴である。

二つ目は三菱鉛筆の経営方針である。日本のものづくりにありがちな、大量生産・低価格商品を製造するのではなく、ユーザーに新しい価値を提供する商品の開発・製造・販売を行っているのが特徴である。さらに、開発関連費用として売り上げの5%を技術関連投資に充てており、これは同業他社よりもウエイトが高いといえるそうだ。

このようにジェットストリームはその書き心地とユーザー満足度を見据えた度重なる開発をもとに人気商品となったわけだが、初めから海外で人気だったわけではなかった。

先述した通り油性ボールペンは一般的に低価格の普及商品であることから、価格の高い商品はまず小売店等の販売サイドに受け入れられにくい。そのため「全く新しい油性ボールペンである」という価値をいかにして伝えるかに苦心したそうだ。また、欧米市場においては、ブリスターパック等に包装された状態での販売が多く、日本ではよく見る店頭試し書きができないことがジェットストリームの良さを体感してもらえないことにもつながっていた。

では、日本とは違ったプロモーションをする必要がある海外市場ではどのような手法で宣伝を行なっているのだろうか。
まず、商品の印象を左右するキャッチコピーはケースバイケースで変えられる。ジェットストリームの場合、「クセになる、なめらかな書き味。」と類似の「addicting smooooooothness」が使用されている。その一方で、ブランドのコアの部分は共通である。また、海外市場では様々なプロモーションを行っており、コロナ禍の影響も踏まえてSNS等のデジタル販促も強化しているところである。ユーザーとのタッチポイントを増やすことでブランド認知・共感の向上を図っている。

今後の海外戦略

三菱鉛筆は、ジェットストリームを筆頭に様々な文房具を海外市場に展開している。これはジェットストリームというボールペン自体の性能やその販売の流れによるものであるが、今後はどのようにしていくのだろうか。

例えば、三菱鉛筆の海外売り上げのうち、約30%がアジア圏でのものである。この理由として、第一にアジアの市場が成長市場であることが挙げられる。中国や東南アジアなど、まだまだその国の成長が見込まれる国の市場で売ることは、海外展開において必須である。国内市場の縮小に伴い、上記のような成長市場において、ユーザーニーズを的確に捉え、商品やサービスを提供していくことで、さらなる企業の評価を上げることを企業の方針としているようだ。

第二に、日本国内の品が海外で人気であることが挙げられる。やはり、いまだに日本商品の評判は良く、地域的に近いアジアには広く受け入れられているのだと考えられる。先に挙げた成長市場であることも相対的な評価の上昇に繋がっているのだろう。

また、他にも特定の地域に強い需要がある商品もある。例えば、自動車産業が盛んな国・地域では工場で産業用途で使われるペイントマーカーがよく使われる。他にもコロナ禍に際し、巣籠り需要というものが世界的に高まっており、自宅での「描く・書く」への需要が増している。特にArt&Craftの分野はそれが顕著で、同企業販売の「ポスカ」など支持される商品が多いことは注目すべきだ。

以上のように、三菱鉛筆では、現状に満足せず、今後の海外市場展開のために、企業としてより一層の需要発見に力を入れている。こういった企業努力に加え、技術投資の下、さらなる事業展開を続ける三菱鉛筆の今後の活躍に注目したい。

執筆:中尾彩、三宅晃太郎、渡邉玲、鈴木実緒

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