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Don’t Handle Worries on Your Body Alone — “Breeze Project” for Supporting Women’s Health(1/2)

からだの悩み、ひとりで抱えないで 「女性のからだ支援〜Breezeプロジェクト〜」(前編)

女子学生の貧困と、健康問題

 あなたは自身の健康を維持するためにどのくらい費用をかけているだろうか。病院代、サプリ代、ジム代、それに伴う時間等々。それ以外にも食料やトイレットペーパー、女性なら生理用品は生活に欠かせないだろう。しかし、近年女性の貧困が取りざたされ、生理用品を手に入れることが困難な女性、特に貧困な女子学生が数多くいることが話題となった。

Breezeプロジェクト」 とは

経済的困難の中で、女性特有の身体的負担に苦しむ女子学生に対して何か支援できないかという思いのもとで2021年、「Breezeプロジェクト」が慶應義塾協生環境推進室によって発足された。学部生・大学院生を対象とした生理用品の定期的な無料配付や、各キャンパス内の女性個室トイレに生理用ナプキンを常備し無料で提供する「OiTr(オイテル)ディスペンサー」の設置、そしてからだに関する座談会の定期開催など、包括的な支援が特徴的だ。

Breezeプロジェクトの取り組み 公式ホームページより

慶應義塾協生環境推進室は2018年4月に設置された慶應の組織。ワーク・ライフ・バランス、バリアフリー、ダイバーシティに関する事業を通して、互いに協力して生きる社会の形成を先導することを目的とする。今まであまり注目されてこなかった女性のからだについて新たに支援するために発足されたのが「Breezeプロジェクト」だ。今回私たちは、担当の黒田さん、中峯さん、鵜澤さんにお話を伺った。

取材時の様子

反響は大きい一方で、周知度には課題も

「Breezeプロジェクト」では、まず生理用品の無償配付が行われた。申し込みを開始したその日に定員の500人分の申し込みがあったそう。配付に際して、このプロジェクトに対してのアンケートが学生向けに行われ、「配付もありがたいがトイレに生理用品がないのが気になる」という声が挙がった。そこで調べるうちにOiTr(生理用ナプキンを常用し無料で提供するディスペンサー)を見つけ、全てのキャンパスへの設置を決めたのだそう。あるキャンパスでは実際に、学生が自ら事務の窓口に生理用品の配付やOiTrの導入をお願いすることがあり、中峯さんは「取り組みの方向性は間違っていないと感じた」と言う。そして、「Breezeプロジェクト」の取り組みは用品を配付して終わりではない。からだについての知識を得るという目的で、生理だけでなく更年期の講演会やからだの相談窓口を設け、気軽に医師に相談できる環境を作った。

一連の取り組みに対する学生の反響はとても大きく、アンケートの記入率・具体性も高かったことで、黒田さんは「みんな色々な悩みを抱え漠然とした不安を抱えていることが分かった」のだという。

参加した人からの反応は良かったその一方で、プロジェクトの周知に関しては課題も残るという。実際、学生向けポータルサイトやTwitterでの宣伝はしているものの、色々な媒体を通して友達伝いで広まっていくのが効果的かもしれないという意見も伺えた。また、全体的に男性の参加がいまだ少ないというところから、男性が女性のからだや男性のからだに起こることについて知ることは恥ずかしいことではないということも、同時に発信していく必要があると黒田さんは述べた。

三田キャンパス・南校舎女子トイレ個室

三田キャンパス・南校舎多目的トイレ

塾生の立場から、まずは学生生活に目を向けてみて

われわれ塾生の立場から、女性の健康問題への理解を促すためには何ができるだろうか。まずは自身の視点から、どのような取り組みがあれば健やかに学校生活を送れるかを考えることが重要だという。現在「Breezeプロジェクト」は主に職員による提案を軸にして運営されている。自分自身の学生生活の中にある些細な障壁に目を向け、意見として示してもらえると、プロジェクトの今後の運営に反映させることができるのだそう。

昨年10月に開催された「女性のからだ座談会「専門医に聞いてみよう」」では、プログラム後半にて、慶應義塾大学の三田・日吉・矢上・SFCの各キャンパスに通う女子学生たちがパネリストとして、生理の時のキャンパスライフの過ごし方について話し合う時間があった。生理の期間は腹痛が激しくなったり、からだが疲れやすくなったりするため、休憩するためのスペースがあるとありがたい、と皆が口を揃えた。SFCに所属する学生は、キャンパス内にリラックスできるソファが設置されているなど、生理の期間も快適に生活を送るための校内施設がある程度整備されていると語った。

こうした塾生の具体的経験と意見を踏まえて、黒田さんと鵜沢さんは実際にSFCキャンパスに赴き、ラウンジにあるソファなどの設備を確認した。キャンパスが6つもあれば、普段の学生生活を送るための環境もそれぞれ大きく異なってくる。過ごしやすさもそれぞれ異なってきてしまうかもしれない。塾生がどこに困難を感じているのかなどを、協生環境推進室が実施するアンケートを通して示すことで、より積極的にそのアイディアを汲み取れるのだそう。

性別・世代を超える「Breeze プロジェクト」

講演会・座談会は「Breeze プロジェクト」の中で唯一、知識の提供を通して年代や性別に関係なく参加者をつなげることができる取り組みなのだと、鵜澤さんは言う。昨年10月開催の第1回講演会は学生や職員を対象としていたが、参加者には学生の子供を持つ親世代も多く見られた。子のからだに関わることを親として理解しておきたいという思いで参加する人が多かったそうだ。また、パートナーの体調について知っておくことは重要だとして参加する男性も多かったという。2022年1月開催の第2回講演会は、更年期をテーマとしているが、申込者には多くの学生がいた。親のからだ・体調の変化をあらかじめ把握しておきたいといとのこと。

性別・世代を超える「Breezeプロジェクト」を通して、それぞれが抱える健康の悩みについての専門知識を得て学ぶと同時に、自らの悩みを発信することができる。予めからだ・体調のことについて知っていれば、自身が不調の際にも余計な不安が軽減されるうえ、身近な人の調子に配慮した行動をとれる。こうしてわれわれの活動の土台であるからだについて互いに理解することは、協力し合って生きるためには欠かせない。

執筆:マーロー瑳良 中尾彩

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