カクテルをイギリス英語風に発音した“コクテイル”と古本を扱うお店という意味合いから名付けられたコクテイル書房。さらに店主のこだわりとして、物事はたくさんのものが混ざり合った方が予想外の良いことを引き起こすかもしれないという想いもこの店名に込められている。
そんなコクテイル書房の歴史は、約20年前国立市でオープンした時にまで遡る。国立駅を出て南西に伸びる朝日通りという商店街の一角にコクテイル書房は佇んでいた。国立といえば一橋大学で知られるが、常連もやはり一橋大の学生が多かったそうだ。しかしながら当時から高円寺が住まいだった店主にとって通勤に時間がかかり、また都心から離れた国立では新規の客が増えにくかったなどのいくつかの理由からその後店舗を二度変えた。古民家を一部改築してオープンした高円寺の現在の店舗は3軒目になるそうだ。
客層は幅広く、20代から80代までの男女が訪れる。来る人の特徴としては、やはり本好きや出版関係者が集まるそうだ。男女比としては女性の方がやや多めであり、これは最近の風潮としてカルチャーに興味を持つ傾向にあるのが特に若い女性であるからと考えられ、客同士で本について語り合う場面も見受けられる。
コクテイル書房においてある本は、ほとんど店主自ら買い取りされたものだ。その数は、およそ3000冊。主に、週に一回神保町にある古書会館で開催される一般書の古本市で買ってきたもの。古本の魅力を狩野さんにお伺いしたところ、同じ題名の本でも時代によって異なる点だとおっしゃっていた。例えば、宇野千代作『色ざんげ』。戦時中に刷られた本は、伏字(……)が多くみられる一方で、戦後に刷られた本は、伏字がない。これは、戦時中の検閲によるものだからだ。狩野さん曰く、同じ題名の本でも、時代背景があって、版によって感じ方が異なるという。
このような古本の魅力を伝えるべく、コクテイル書房では、”まちのほんだな”という取り組みがされている。お店の外に、本棚が設置してあるのだ。そこに並べてある本は、自由に持って行っていいのだが、必ずもう一冊どんな本でもいいので持参した本を代わりにその本棚に入れる、というルールがある。しかし、何もせずに”まちのほんだな”を放置しておくと、本棚は荒れてしまう。持参する本は、どんな本でも構わないので、フリーペーパーと交換する人がいるからだ。そのため、コクテイル書房の二階には、”まちのほんだな”に補充するための本がたくさんストックしてある。店主の粋なはからいのおかげで、”まちのほんだな”は綺麗に保たれているのだ。
漱石カレー。コクテイル書房の目玉料理だ。漱石は牛肉が好きだったので、大きな牛肉が沢山入っている。味はさっぱりしていて、非常に食べやすい。隠し味の、、、が味を際立たせていて美味しかった。この漱石カレーは今後レトルト食品にもなる予定で、主に本屋などで発売されるそうだ。再現度の高い漱石の好物をお手頃で楽しめるので、一度手に取ってみてはいかがだろう
執筆:糸繰雄亮、土屋冠侍、中山穂香
校閲:ジェイコブ・ワグナー