Schoo—Education for life

2020/04/25 EDUCATION, JAPAN, LIFESTYLE, NEW

Schoo－生涯学習の実現

日本で最近社会人を中心に人気が広がっている動画配信サービスがある。その名もSchoo。　この表記を見た時、恐らく多くの人が、schoolのスペリングミスではないかと思うだろう。

このサービスを提供する株式会社Schooは「世の中から卒業をなくす」というミッションを掲げている。”l”がないのも、この理念に由来するものだ。どこでも簡単に動画授業を受講できるこのサービスにおいて、「世の中から卒業をなくす」とはどういうことなのか？代表取締役社長の森健志郞氏にお話を伺った。以下はその内容を再構成したものである。

冒頭でも述べたようにSchooはインターネットを通じた生放送の授業サービスである。ここでの授業は年代、性別、地域に関係なく、生配信ならば登録するだけで、無料で受講する事ができる。専用のアプリケーションもあるが、HPへ行くだけでサービスが利用可能だ。

授業内容としては社会人が学び続ける必要があるようなビジネスやテクノロジーを取り扱うことが多く、視聴者は授業内容についてコメントをすることができる。授業そのものは視聴者のコメントの中から受講生代表が質問を拾い、先生が質問に答えるという対話形式で進んでいく。このような授業形態においては日本の大学の大教室の講義のような一方向のコミュニケーションではなく、ゼミのような双方向のコミュニケーションが生まれやすくなっている。

またコメント欄のところには気になるコメントに「いいね！」をするボタンがある。これは司会者がコメントを選ぶ基準となっており、受講生が注目しているコメントは先生に質問されやすくなっている。コメント欄では受講生同士の会話もでき、先生と生徒の縦の関係だけでなく、生徒同士の横の関係も重要視されている。

更に事前の受講予約数までもが可視化されており、正にSchooではインターネット上のライブ授業を通して、一種のコミュニティーを形成されているといえる。そしてそのコミュニティーは主に、「教材・先生・仲間・場所」という要素で構成されている。

代表の森氏はSchooはまるで本物の学校の教室空間のような、あらゆる生徒が能動的に授業に参加できるシステムを作ることで、すべての人が積極的に学び続けられる社会を実現しようとしているのだと語る。

日本では「大学は高校卒業後に進学する教育機関である」という認識が強いが、本来大学は高校を卒業した人のためだけの学校であるというように決まっているわけではなく、社会人が学び直しをする場としての側面もある。その意味で社会に出てから学習が必要だと感じた分野、興味が出てきた分野の知識を学び直せるSchooの長所との親和性が高く、大学との連携も行われている。多忙な社会人が大学生同様に毎日のように校舎に通うのは難しいが、Schooならどこでも授業を受けられるので受講しやすい。また、自分の興味に合わせて学ぶことができるので社会人だけでなく幅広い年代の人にとって利用するメリットがある。

そしてこれこそが冒頭の問いの答えとなっている。現代社会は常に変化し続けておりそれに対応する生き方を我々は迫られている。既存の知識が役に立たなくなることも多いこの社会で社会人は常に変化に追いつくために学ぶ必要がある。そしてその学びは一生涯続くものである。そうしたいわば生涯学習を可能にするのがこのSchooなのである。

また現在の日本では都市圏を中心に人材、情報、サービスが集中する一方で、地方は人口減少により、活気が失われている地域が多く、格差がみられる。そのため地方では例えば現代社会において不可欠である、IT系の人材を育てる環境が整っているとは言えない。そのために将来の選択肢を狭められた若者は都市圏へ流出してしまっている。

そのような状況でSchooの授業を通して地方の若者も都心部の若者と同程度の情報や知識を入手することができるようになれば、人材育成や雇用の改善ひいては過疎化を解決する糸口につながりうる。実際にSchooでは離島の奄美市でのサービス提供を行い、人材育成の土台を作りつつある。

社会人の終わることのない学びを重点に置いているSchooであるが、中には中学生、高校生などの利用者もいる。森氏はなかでも宇宙工学に関するSchooの授業に感銘を受けてその分野で一流のよりレベルの高い大学へ志望を変え、半年の死にもの狂いの勉強で合格した高校生からの感謝のメッセージが忘れられないと語った。

元来新人社員用の研修動画がつまらなかったことがきっかけとなって興した事業であったが、子供の進路も決めてしまうなど、可能性が無限大の事業であり今後の動向も気になるところだ。